
AI研究機関OpenAIの共同設立者であるイーロン・マスク氏は、3月1日にOpenAIを相手取って訴訟を起こしました。訴訟理由は、非営利団体であるはずのOpenAIが設立時の理念を放棄し、利益追求を優先しているというものです。OpenAIは、イーロン・マスク氏についてBlogにて、私たちは、イーロン・マスク氏の主張をすべて却下するつもりとして反論を掲載しています。
このニュースにピンと来ない人もいるかもしれませんが、OpenAIは、そもそもイーロン・マスク氏を含む著名起業家や投資家によって設立された団体です。イーロン・マスク氏は共同設立者の一人としてOpenAIの会長を努めていました。
OpenAI設立とイーロン・マスク氏の関係の経緯は下記の通りです。
2015年12月、イーロン・マスク氏を含む著名な起業家や投資家たちによって、非営利のAI研究機関「OpenAI」が設立されました。当初の目標は、人類全体に利益をもたらすようなオープンソースのAI技術の開発と推進でした。イーロン・マスク氏はOpenAIの共同設立者であり、会長を務めました。
2019年2月、OpenAIは5億ドルの資金調達を発表しました。この資金は、AIの安全性と倫理に関する研究、および汎用人工知能(AGI)の開発に注ぎ込まれる予定でした。イーロン・マスク氏は、この資金調達ラウンドにおいても重要な役割を果たしました。
2021年2月、イーロン・マスク氏はOpenAIの会長職を辞任しました。理由は、OpenAIが営利企業であるTeslaと競合する可能性があることを懸念したためです。しかし、イーロン・マスク氏はOpenAIの取締役会には留任し、今後も同社にアドバイスを行う予定としていました。
OpenAIを相手取って起こした訴訟で、マスク氏は、OpenAIが非営利団体として設立された当初、人類全体に利益をもたらすようなオープンソースのAI技術の開発を目指していたと主張しています。しかし、近年OpenAIはMicrosoftから数十億ドルの投資を受け、営利企業としての側面が強くなったと指摘しています。
OpenAIがブログに掲載した反論を日本語化した内容を掲載します。
ミッションを推進するために営利目的の構造について話し合ったとき、イーロンはテスラと合併するか、完全な支配権を欲しがりました。イーロンは、Google/DeepMindに関連する競合他社が必要であり、自分でやるつもりだと言ってOpenAIを去りました。彼は、私たちが自分の道を見つけるのを応援すると言いました。
2017年後半、私たちとイーロンは、ミッションの次のステップは営利目的の事業体を設立することだと決めました。イーロンは、過半数の株式、最初の取締役会の支配権、そしてCEOになることを望んでいました。これらの議論の途中で、彼は資金提供を差し控えました。リード・ホフマンは、給与と業務をカバーするためにギャップを埋めました。
イーロンとの営利目的の条件に合意できなかったのは、個人がOpenAIを完全に支配することは使命に反すると感じたからです。そして、代わりにOpenAIをテスラに合併することを提案しました。2018年2月初旬、イーロンはOpenAIが「テスラをドル箱として愛着を持つ」べきだと示唆するメールを転送し、それは「まさに正しい...テスラは、グーグルにろうそくを握ることを望むことができる唯一の道です。それでも、Googleに対抗するおもりになる可能性は低いです。ただ、ゼロではない」
イーロンはすぐにOpenAIを離れることを選択し、成功の確率は0であり、テスラ社内に汎用人工知能の競争相手を作る計画を立てていると述べました。2018年2月下旬に彼が去ったとき、彼は私たちのチームに、私たちが何十億ドルもの資金を調達するための独自の道を見つけることを支持すると言いました。2018年12月、イーロンから「数億の資金を集めても足りない」というメールが届きました。これはすぐにでも年間数十億ドル必要で、さもなければ忘れてしまう」
https://openai.com/blog/openai-elon-musk
OpenAIの主張を素直に受け入れるなら、イーロン・マスク氏によるOpenAIが設立時の理念を放棄し、利益追求を優先しているという主張も素直に受け取れなくなりますね。むしろ、資金がかかるのだからイーロン・マスク氏が将来的な利益を受け取れる体制を構築したいうと試みに対して、OpenAIが拒否したと。
イーロン・マスク氏は、2023年にはOpenAIが発表した新しいGPT-4など、より強力なシステムの開発を一時停止するよう求めていました。この公開書簡では、AIの開発が社会にもたらす潜在的なリスクを指摘しています。しかし、イーロン・マスク氏がスタートアップ X.ai で同社と競合していることを考えると、その真意も疑いたくなりますね。
ただ背景はどうであれ、オープンソース化も含む主張には、イーロン・マスク氏のほうが原理原則を重視しているように思えます。
イーロンは、このミッションがAGIのオープンソース化を意味しないことを理解していました。イリヤがイーロンに語ったように、「AIの構築に近づくにつれて、オープンさを失い始めるのは理にかなっています。openAIのオープンは、AIが構築された後、誰もがAIの成果の恩恵を受けるべきであることを意味しますが、科学を共有しなくてもまったく問題ありません...」と答えると、イーロンは「うん」と答えました。
https://openai.com/blog/openai-elon-musk
OpenAIはこう主張していてイーロン・マスク氏も同意している事になっていますが……。
これらの訴訟と議論が、OpenAIによる汎用人工知能(AGI)の公開タイミングにも影響を与えていると憶測を呼んでいます。OpenAIはマイクロソフトの出資も受け入れ関係を強めているので、様々な思惑が働いているように思えます。
あまりに社会的影響力が大きくなり過ぎたOpenAIと、共同設立者であるイーロン・マスク氏の訴訟。どう決着するんでしょうね。
参照元:OpenAI Ruiters cna thebridge
監修者のコメント:複数のソースからAIを用いてまとめました。まとまりはないですが、一部独自編集を加えています