ブルームバーグの報道によると、同社は当初、真の無人運転車を構想していたが、現在はより限定された機能を持つハンドル付きのEVに取り組んでおり、発売目標を2028年に延期しているということです。この記事では、アップルカーの開発経緯や技術的な特徴、市場での競争力などについて解説します。
アップルカーの開発経緯は下記の通りです。
- タイタン計画: アップルが電気自動車の開発に着手したのは、2014年頃からとされています。その時点では、コードネーム「タイタン」と呼ばれる計画で、自動化レベル5（どんな状況でも自動運転が可能なレベル）を目指していたと言われています1。しかし、技術的な困難や経営陣の交代、人材の流出などにより、計画は頓挫しました。
- ダグ・フィールドの復帰: 2018年には、テスラからアップルに戻ったダグ・フィールドが、タイタン計画の責任者に就任しました。フィールドは、アップルのハードウェアエンジニアリングの副社長であり、テスラではモデル3の生産を担当していました。フィールドの下で、アップルカーの開発は再び加速しました。
- 2028年発売目標: 2021年12月には、アップルが2026年に一部自動運転機能を持つ電気自動車を発売すると、複数のメディアが報じました。しかし、2024年1月には、ブルームバーグ通信が、アップルの取締役会が2021年12月に開発の方向性を見直し、発売目標を2028年に延期したと報じました。また、当初は高度な自動運転技術の採用を断念し、高速道路での運転支援といった商品化しやすい技術の採用にとどめる見通しだということです。
アップルカーの技術的な特徴は次の通りです。
- ハンドルやペダルを備えた従来型の車両: アップルカーは、ハンドルやペダルを備えた従来型の車両と同じ設計になると見られています。これは、完全自律走行は高速道路に限られるということを意味しています。つまり、アップルカーは、自動運転レベル2+（運転者が常に監視する必要があるが、システムが複数の機能を同時に制御するレベル）に相当すると考えられます。これは、テスラのオートパイロット機能と同等のレベルです。
- ソフトウェアアップデートで自動運転レベルを向上させる可能性: アップルカーは、ソフトウェアアップデートを介して、発売後により高度な自動運転に達する可能性があります。これは、アップルが自動運転技術の開発を続けていることを示しています。実際、アップルは、カリフォルニア州で自動運転車のテストを行っており、2021年には69台の車両と154人のドライバーを登録していました。また、アップルは、自動運転に関する特許も多数出願しており、例えば、自動運転車の経路計画や障害物回避、運転者の状態監視などの技術に関する特許があります。
- モノリシック型のバッテリー: アップルカーは、モノリシック型のバッテリーを採用するという噂があります。これは、一般的な電気自動車のバッテリーがモジュール型であるのに対し、モノリシック型は一体化された構造で、より多くの電池を詰め込むことができるという特徴があります。これにより、アップルカーは、より高いエネルギー密度と航続距離を実現できると期待されます。
もっとも、アップルカーの市場での競争力を持つ可能性はあるでしょう。
- 高級EV市場での差別化: アップルカーは、価格が10万ドル以下になるよう計画されていると言われています。これは、高級EV市場での競争力を高めるための戦略と考えられます。同じ価格帯のEVには、テスラのモデルSやメルセデスベンツのEQSなどがありますが、アップルカーは、アップルのブランド力やデザイン力、ソフトウェア力などで差別化を図ることができると見られています。
- 中国市場での挑戦: アップルカーは、中国市場での展開も視野に入れていると言われています。中国は、世界最大のEV市場であり、政府の支援やインフラ整備などでEVの普及が進んでいます。しかし、中国市場では、テスラや日本の自動車メーカーだけでなく、独自のEVメーカーも台頭しており、競争が激化しています。アップルカーは、中国の消費者のニーズや嗜好に合わせた製品やサービスを提供する必要があります。
この記事では、アップルが開発中とされる電気自動車「アップルカー」に関する最新の情報を紹介しました。アップルカーは、当初は真の無人運転車を目指していたものの、技術的な困難や市場の現実に直面し、より現実的なレベルの自動運転機能を持つEVに方針を転換しています。自動運転を目指した方針としては挫折ではありますが、それでもアップルブランドの車なら欲しいという人も多いのではないでしょうか。
監修者によるコメント：ニュース記事と関連情報をまとめ、一部監修者の見解も加えています。